第5話  地球微生物学よこんにちは

その5  海底下生命、そらウチでもやらなあかんやろ!

このパシフィックノースウエスト国立研究所は、アメリカエネルギー省管轄の研究所で「世界で初めて原子爆弾を作った場所」として知られている。原子力関係の国家的機密研究やら放射性廃棄物の地下貯留やら、とにかく何となく後ろめたいことを研究しているようで、実際、研究所はできるだけ人間社会との接触を避けるように、果てしなく荒涼としたコロンビア川洪水玄武岩帯の砂漠のど真ん中にあった。

放射性廃棄物の地下貯留なぞを扱っている行き掛かり上、万一に備えて地下水の化学やら微生物の動態の研究を1990年代から進めており、深部地下微生物の研究では先端を走っていたのだ。

1995年、パシフィックノースウエスト国立研究所のトッド・スティーブンスとジム・マッキンリーは、次のような論文を発表した。コロンビア川洪水玄武岩地下水において、玄武岩と地下水のなんて事の無い化学反応で大量の水素が発生し、その水素によって太陽光と完全に独立した「地球を食べる」地殻内独立栄養微生物生態系(スライム)が支えられているという「スライム仮説」だ。そして、「このスライムこそ地球最古の生態系や地球外生命生態系に最も類似したシステムなのだ」と主張した。

そんな主張を、「最古の生態系は深海熱水で生まれたのだ」と信じてやまないボクが見過ごせるはずはあろうか。いやない(反語)。