第5話  地球微生物学よこんにちは

その5  海底下生命、そらウチでもやらなあかんやろ!

人生初の有無を言わせないギョーム命令に反射的な反発を感じながらも、一方では「ほほう、オヤジにもようやくこのテンサイのスゴさが理解できたようだな。やはりこのテンサイがJAMSTECの新しい研究プロジェクトに必要だと」とスラムダンクの桜木花道のようなセリフをひとりごちてもいたんだ。

さらに、キラーンとナイスアイデアも浮かんだ。

「深海熱水というのは、海底下数kmから上昇してくる熱い水の流れだ。温泉もそうだ。ということは深海熱水や温泉は地殻へ開かれた窓なんだという理屈をこねて、地殻内微生物の研究をやるフリをすればいいんじゃないか。うむ、そういう屁理屈をつけて上をごまかせば、深海熱水の研究をやりたいほうだい。しかも無条件でJAMSTECからの接待就職付き。これぞ一石二鳥、漁夫の利。やはり天才?」

ホントーはもう少し深い青春の葛藤があったはずだと思うのだけれど、よく思い出せない。とりあえずそういうブラックな思いに身を任せる事で折り合いをつけたように思う。そして、カール・シュテッターの研究室に武者修行に行くかわりに、アメリカの北西部ワシントン州に再び舞い戻る事になったのだ。

しかし今度はボクの大好きだったワシントン大学やシアトルではなく、リッチランドという内陸砂漠のど真ん中にある田舎町のパシフィックノースウエスト国立研究所というあまりパッとしない研究機関だった。