第27回 生きているからこそ輝く昆虫

カメノコハムシの一種 (ハムシ科:トゲハムシ亜科:カメノコハムシ族)
A tortoise beetle (Chrysomelidae: Hispinae: Cassidini)
体長:4 mm 撮影地:リンコン・デ・ラ・ビエハ、コスタリカ(写真クリックで拡大)

 今回は、フェイスブックに載せたらエラく好評だったカメノコハムシをご紹介。

 カメノコハムシは、ハムシという小さな甲虫の1グループで、その名の通り、甲羅を背負ったカメのような形をしている(ジンガサハムシとも呼ばれます)。ひっくり返ると、その甲羅=翅をパッと広げて起きあがり、元の体勢に戻る。触角や頭、足をすくめ、甲羅の縁を葉に押し当て隙間をなくせば、敵からの攻撃もある程度防げる。

 このカメノコハムシ。コスタリカをはじめ熱帯地方には多様な種が生息している。似たものもたくさんいるから分類学者泣かせだけれど、とてもカラフルできれい、テカテカピッカピカの「構造色」を放つ種も多いこともあって、虫こぶとはエラい違いの人気ぶり。がぼん!

 構造色とは、プラチナコガネの回でも紹介したけれど(「第6回 輝かしいコガネムシ」参照)、表皮の構造の極微細な違いによって光が干渉し合い、再現される色のこと。

 ところが博物館にあるカメノコハムシの標本は、プラチナコガネと違って、どれもこれも似たり寄ったりの茶色になってしまっている。生きているものと比べるとどうも冴えない。

 理由は構造色のつくりにある。カメノコハムシの構造色は、前翅の角皮(クチクラ)の構造と液状の物質(水分)とが色を生み出しているため、水分がとぶと色が見えなくなってしまう。だから標本になると、その輝きは薄れてなくなってしまうのだ。

カリドテラ・エグレギアというハムシの一種
A tortoise beetle, Charidotella egregia
このゴールドのハムシ、なんと見る見るうちにゴールドレッドになって、やがてレッドになる。わずか1~2分で変身だ。写真はちょうど赤みを帯びてきているところ。翅の水分を飛ばしたり、注入したりして色素の赤と構造色のゴールドの間を自在に表現できる。例えば、ストレスを感じたときに、金から赤に変わるので、写真の個体は撮影でストレスを感じているのだろう。赤は敵を威嚇するためには効率の良い色。翅の一番下の層に赤い色素の層がある。
体長:6.5 mm 撮影地:リンコン・デ・ラ・ビエハ、コスタリカ (写真クリックで拡大)
ストラス・レバスィイというカメノコハムシの一種
A tortoise beetle, Stolas lebasii
水を弾く質感。カメノコハムシには、このように赤い斑点と紺色を組み合わせた模様をしたものが何種類もいる。
体長:10 mm 撮影地:タパンティ国立公園、コスタリカ(写真クリックで拡大)
カリドティス属カメノコハムシの一種の幼虫
A larva of Charidotis tortoise beetle
左側のおしりの方にある、茶色い細長く伸びた「棒」は、幼虫自身がこれまでに脱いできた殻をつなげたもの。振りかざして寄生バチなどの敵を追い払う。棒は「本体」の前の部分にまで届く長さになっている。これまでに何回脱皮をしてきたかもわかりやすいので研究がしやすい。おまけ:棒の一番先、こげ茶色をしたT字の部分は、卵から孵った幼虫が脱皮をするまでにためた糞。生まれたばかりの幼虫は、脱皮の殻をもっていないので、自分の糞をためて棒(盾)を作る。
体長:4 mm, 棒の長さ:4 mm 撮影地:バルビージャ国立公園、コスタリカ(写真クリックで拡大)

カメノコハムシの種の同定をスミソニアン・リサーチ・インスティテュートのFredric V. Vencl博士にお願いしました。感謝します。

西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html