第4回 太陽活動は活発化? それとも沈静化?

「1つ確実に言えることは、今の太陽活動は、今まで我々が経験してきたものと比べてかなり異質になっているということです。今までだと、平均11年ごとに太陽の磁場の極性が反転するのを繰り返していました。磁場の動きからすると22年周期の変化をしていたわけです。今回は北だけ反転したということで、国立天文台のチームは、磁石がひっくり返るのではなくて、プラス極が両方とも外側を向いていて、中にマイナス極があるような、磁石が2個できる状態が今、太陽にできつつあるのではないかと主張しているんですよね。本当にそうなるかは、まだ今の段階ではわかりません」

太陽の大規模磁場の2008年の様子と近未来予想。右が複雑な磁場構造を持つ近未来の予測。(提供:国立天文台/JAXA)
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 宇宙天気予報を担う長妻さんにしてみると、これから先、どのようになっていくかひたすら日々、人工衛星や地上の観測機器を用いて目を凝らしていくしかないようだ。

「1年か、あるいはそれ以上、観測していって、どちらのシナリオがもっともらしいか、分かってくると思います。今までになかった太陽活動の側面が見られるということで、研究としても面白い部分がありますね。ただ、もし本当にマウンダー極小期のような状態になってしまうと、地球の周りの宇宙環境が静かになるわけですから、もちろん、被害が出るような大きな活動も困るんですけど、静かすぎるのも研究にとっては面白みが少ないかもしれないな、と」

 宇宙の天気予報をしつつ、「宇宙天気」そのものの研究者である長妻さんは、このあたりで非常に複雑そうな表情を見せたのだった。

太陽活動が活発化するのか沈静化するのかは、1年か、あるいはそれ以上観測しないとわからないという。今後の観測から目が離せない。(写真クリックで拡大)

つづく

長妻努(ながつま つとむ)

1967年、東京都生まれ。情報通信研究機構 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室研究マネージャー。博士(理学)。1995年、東北大学大学院理学研究科博士課程修了。大学でオーロラを研究したのち、太陽活動とその影響に興味を移す。現在は放射線帯の予報モデルや、人工衛星がいた場所の宇宙環境を再現する数値予報モデルをはじめ、宇宙天気予報の研究に従事している。『太陽からの光と風 -意外と知らない?太陽と地球の関係 (知りたい!サイエンス)』(技術評論社)、『総説 宇宙天気』(京都大学学術出版会)などの共著がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合でアニメ「銀河へキックオフ」として放送中。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider