第3回 太陽嵐で大規模停電が起きるわけ

「オーロラが非常に明るく見える状態というのは、極域で強い電流が流れている状態でもあります。オーロラだけを見ていると非常にきれいでいいなと思うんですけども、宇宙環境としては荒れている状態なわけです。特に地磁気の乱れが非常に大きくなって、例えば日本の北海道でもオーロラが見えるような状態になると、それはもうかなり大きな磁気嵐なんです」

 というわけで、美しいオーロラを伴いつつ、インフラにとっては非常に危険なのが地磁気のじょう乱というわけだ。そのことは、次第にはっきりと認識されるようになっており、アメリカでは、様々な検討が始まっているという。

「現状ですと、極めて大きな太陽の活動があった時、社会インフラにどれぐらいの影響が出そうか定量的に検討しはじめていますね。経済的な損失が何兆円という水準になるかもしれない、と。送電線でも、スマートグリッドですとか、情報技術を駆使したものはむしろ、宇宙環境のじょう乱の影響を強く受けるのではないかと言われていまして、すると、思わぬ所まで被害が波及するのではないかと……日本は、北米やヨーロッパよりも磁気的な緯度が低いので、送電線への影響は相対的に小さいと考えられていますが、万が一に備えて今後きちんと考えていこうという雰囲気になってきた段階です」

 なお、アメリカで近年、特にこの議論が活発になっているのは、来年5月に、太陽の活動が極大期を迎えるという予測があるからだ。これはそもそも、ぼくが太陽の活動を見つめ続ける「宇宙天気予報士」、長妻さんを訪ねようとしたきっかけでもあった。

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つづく

長妻努(ながつま つとむ)

1967年、東京都生まれ。情報通信研究機構 電磁波計測研究所 宇宙環境インフォマティクス研究室研究マネージャー。博士(理学)。1995年、東北大学大学院理学研究科博士課程修了。大学でオーロラを研究したのち、太陽活動とその影響に興味を移す。現在は放射線帯の予報モデルや、人工衛星がいた場所の宇宙環境を再現する数値予報モデルをはじめ、宇宙天気予報の研究に従事している。『太陽からの光と風 -意外と知らない?太陽と地球の関係 (知りたい!サイエンス)』(技術評論社)、『総説 宇宙天気』(京都大学学術出版会)などの共著がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合でアニメ「銀河へキックオフ」として放送中。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider