第2回 太陽嵐でパソコンのデータが消失する?

 かつて、短波通信は今よりずっと重要な役割を世界的に担っていた。とにかく「遠く」と通信するための一番効率的な方法だったのだから。しかし、現在では海底ケーブルや、通信衛星のおかげで、相対的に重要性は減じている。

「遠洋漁業の漁師さんが今も、一部使っていたりするようです。あとは、飛行機の通信。極回り航路ですと、静止衛星との角度の関係で衛星通信もなかなか厳しいし、どうしても短波でないと通信が維持できない領域があります」

 聞くかぎり、現在の短波通信の用途は限定的だ。とすると、フレアの予報も、以前に比べて実用的な意味合いは減ってきているのかもしれない……というのは誤解だとすぐに分かった。フレアの予報には別の重要な意味があるという。

「つまり……フレアというのはほかの大きな太陽活動の先駆けなんですね。大きなフレアに伴って、太陽からCME(コロナ質量放出)と呼ばれるガスが放出されることがあります。このCME現象に伴って、高エネルギーのプロトン(陽子)がたくさん生成されることがあり、地球の周りに宇宙放射線の一種であるプロトンがたくさんやってくる場合があります(プロトン現象)。特に、大きなプロトン現象が発生したら、ISS(国際宇宙ステーション)で働いている宇宙飛行士が、ステーション内で遮蔽された区画へと退避したりといったことも必要になります。さらに、CMEが地球に到来することで、単純に電離層が乱れるデリンジャー現象とは違い、もっと大きな範囲にわたる磁気圏の乱れが起こることがありますから、地上への影響もある地磁気嵐を予報しなければなりません。なので、フレアが観測されたら、プロトン現象の到来やCMEのガスが地球にどれぐらいの時間で到来するかも予測しなければなりません。」

机の上にもSDOの画像が。(写真クリックで拡大)