<へえ、変わった鳥だなあ……>

 くちばしが長く鋭くて、頭全体がビロードのように滑らかな漆黒。背中は、黒地に星を散らしたような無数の白い点。

 ひときわ目を引くのが、首につけた蝶ネクタイか襟のように見える三角形のストライプ模様。まるでフォーマルスーツに身を包んでいるかのような上品さが漂っています。

「アウッオーーーア、アウッオーーーア」

 じっと見ていると、さっきとは異なる鳴き声を発しました。

 それはルーン(=Loon)と呼ばれる水鳥で、和名をハシグロアビといいます。この鳥がミネソタ州の州鳥で、独特の外見と鳴き声を持ち、湖のいたるところで見られることから、ノースウッズを代表する水鳥であることを知ったのは、後のことでした。

「ウフフフフフーッ、ウフフフフフーッ……」

 警戒しているのか、誰かに呼びかけているのか。いきなり、鋭い金切り声で、笑い出すかのように叫ぶので、おもわずどきっとさせられました。

 <いったいいくつの鳴き声があるんだろう?>

 さらに近づくと、ルーンは滑らかな動きで、頭からとぷんと水中にもぐり込み、しばらく消えたあと、カヤックの反対側に姿を現しました。

 ふたたび近づくと、ルーンはまた水中に消え、別の場所に現れました。

 そんなふうにして、このふしぎな鳥と、湖面で追いかけっこをしました。

 テントに戻ってからも、日が暮れるまで、ルーンの呼び声が湖面に鳴り響いていました。

つづく

大竹英洋

大竹英洋(おおたけ ひでひろ)

1975年生まれ。写真家。一橋大学社会学部卒業。1999年に米国のミネソタ州を訪れて以降、北アメリカ大陸北部に広がる湖水地方「ノースウッズ」の森に魅せられ、野生動物や人々の暮らしを撮り続けている。主な著書に『ノースウッズの森で』(「たくさんのふしぎ傑作集」)、『春をさがして カヌーの旅』(「たくさんのふしぎ」2006年4月号)、『もりのどうぶつ』(「こどものとも 0.1.2.」2009年12月号)(以上、すべて福音館書店)などがある。また、2011年3月NHK BSの自然ドキュメンタリー番組「ワイルドライフ カナダ ノースウッズ バイソン群れる原生林を行く」に案内人として出演。近著は「森のおく 湖のほとり ノースウッズを旅して」(月刊 たくさんのふしぎ 2012年 09月号)
本人によるブログは「hidehiro otake photography」

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