空腹は最高の調味料。おかずは、ふりかけとインスタントみそ汁だけですが、こんなにも美しい湖畔で食べれば、それはもう、どんなごちそうだってかないません。
夕食を終え、食糧を木に吊し、日暮れまで時間があるので、湖面に出てカヤックを漕ぐ練習をしました。
すると、どこからか奇妙な音が聞こえてきました。
「アオーーーーン、アオーーーーン……」
ぼくは思わずまさかと思って、あたりを見渡しました。オオカミが現れたのかもしれないと思ったのです。
しかしその声は、思いのほか近くから聞こえてきます。
<昨夜も遠くでこんな声が聞こえたような……あれは気のせいじゃなかったんだ。いったいなんだろう?>
声の聞こえる方角を見ると、何かが湖面を横切っていくのが見えました。水鳥のようです。カモよりすこし大きいかもしれない。
カヤックを漕いでいくと、その鳥はすぐ逃げるわけでもなく、姿がよく見える距離まで近づくことができました。