そう思っていると、ふと目にとまったのは、さっきまで読んでいた文庫本『野性の呼び声』でした。

 <そうだ。これを燃やそう。古本だし、ジャック・ロンドンならきっと、こんな使われ方をしても、怒らないんじゃないかな……たぶん>

 などと勝手な理由で納得して、ぼくは読み終わったばかりの最初の数ページをちぎり、ストーブの底につっこんで、マッチで火をつけました。

 赤い炎が燃えあがり、じわじわと冒頭の詩が灰になっていく。

 白い煙りが、木立のなかへとのぼっていきます。

 炎は底のメッシュから空気を吸い込み、あっという間に小枝と松ぼっくりに燃えうつりました。

 その様子を見届けると、ぼくは、ごうごうと燃え盛る直火の上に、米と水をいれたコッヘルを乗せました。

 間もなく、ぐつぐつと音を立てながら、ふたの脇から湯気が上がり、ほんのりと甘い、ごはんの匂いが立ちこめてきました……。

この連載の前回の
記事を見る

この連載の次の
記事を見る