第25回 野性の呼び声

 空腹は最高の調味料。おかずは、ふりかけとインスタントみそ汁だけですが、こんなにも美しい湖畔で食べれば、それはもう、どんなごちそうだってかないません。

 夕食を終え、食糧を木に吊し、日暮れまで時間があるので、湖面に出てカヤックを漕ぐ練習をしました。

 すると、どこからか奇妙な音が聞こえてきました。

「アオーーーーン、アオーーーーン……」

 ぼくは思わずまさかと思って、あたりを見渡しました。オオカミが現れたのかもしれないと思ったのです。

 しかしその声は、思いのほか近くから聞こえてきます。

 <昨夜も遠くでこんな声が聞こえたような……あれは気のせいじゃなかったんだ。いったいなんだろう?>

 声の聞こえる方角を見ると、何かが湖面を横切っていくのが見えました。水鳥のようです。カモよりすこし大きいかもしれない。

 カヤックを漕いでいくと、その鳥はすぐ逃げるわけでもなく、姿がよく見える距離まで近づくことができました。