第11章 南極の夢 後編

(承前)
 1月18日、ベルグラーノ基地を離れる日、植村は偵察行の結論のように書いている。

《私の南極大陸の単独横断が、果して実現するかどうか?
 自分の行動的には、これから訓練を行うことで、横断のテクニックの点では充分可能性はある。ここ5日間の滞在であったが、自分ではやれる自信を充分にもった。というより肌で確かめた。だがしかし、自分でいくらやれると思ったところで、私を助けてくれる人がいなくてはできないのだ。アルゼンチン、アメリカの両基地である。アルゼンチンの方は、到達予定地であり協力は求められるが、アメリカの基地より出発に当り、私の物資を運んでもらわなくてはならないのだ。タイム・ライフ社の方でアメリカの基地使用に関し、ナショナル・サイエンス・ファウンデーションの方にPushしてやると言ってくれていたが、いったいどこまでやってくれるのか。》

 冒険そのものは、十分に可能だ。しかし、技術的には可能であるとしても、アルゼンチンとアメリカ、2つの国の協力を得られなければ、行動がとれない。そこにこそ大きな困難があることを、植村はこの段階ですでに予知していた。今回、アルゼンチン基地に入ったのも、南極単独横断の偵察のためとは、一言もいっていない。見学し、報道することが目的ということで、軍の許可を得た。

 アメリカの協力については、まだ正式に打診したわけではなかったが、タイム・ライフ社に相談はしてみていた。アルゼンチン軍よりさらにガードが固そうなことは感触として得ていた。いずれにしろ、両国の軍の協力が南極単独横断の成否をきめる要になるだろうと、植村はこの時点で予見していた。そしていっぽうでは、なんとかなる、なんとかしなければ、と植村らしい陽性の楽観もあった。そうでなければ帰国してすぐ後、同年5月に犬橇習得のためにグリーンランドに行くことなどできなかっただろう。