第11章 南極の夢 前編
到着した1月14日、空軍中佐が親切に勧めてくれるのにしたがって、ヘリコプターの第一陣に乗せてもらった。上空から氷と雪の世界を一望できた。
内陸から氷河がせり出してきている。ヒマラヤの氷河にくらべても、さほど危険は感じられない。さらに内陸に向うと、棚氷の氷原がえんえんと広がっている。平らで氷の山ひとつない。「これだったら私は南極大陸横断は出来ると直感で感じとった」。
ヘリコプターは基地に着陸。雪上に降りて歩いてみると、雪がかたい。もぐらない。ヒマラヤの雪とそうかわらない、重そうなザラメ雪である。
植村はここでも、まちがいなく「出来る」と思った。
もちろん、初日の風景一瞥であり、氷雪の感触である。横断の困難が細かくチェックされたわけではない。しかし、こういう観察のなかに、私は植村らしさを自ずと感じてしまう。