第5回 平凡な千枚より傑出した1枚を

 たとえば、雨のなかでフルーツを食べる極楽鳥の写真は私のお気に入りの1枚です。彼らが暮らしている場所は、晴れているときばかりではありません。当然、雨も降ります。野生に生きる彼らの物語の1エピソードとして、雨の日のもつ空気感まで私は撮影したいと思いました。そういうことを私は常に心がけています。だから、悪天候での撮影は好きなんですよ。

――なるほど。では、最後の質問ですが、生物学者だけでなく、写真家にもなったことで何が変わりましたか?

 生物学がわかったうえで写真が撮れれば、両者の橋渡しができますよね。たとえば、フォジャ山脈のように科学者しか行けない調査隊に参加して、絶滅の恐れがある生きものの素晴らしい写真を『ナショナル ジオグラフィック』で発表することで、正しい知識をより多くの人に伝えることができます。

 学生時代にボルネオへ調査に行ったとき、熱帯雨林がたくさん破壊されているところを私は目の当たりにしました。貴重な自然をテーマに論文を書く一方で、自然破壊が進む現実にものすごくフラストレーションがたまったんです。

 ところが、いまは違います。貴重な熱帯雨林の写真を撮影して『ナショナル ジオグラフィック』で発表すれば、世界中の人々に熱帯雨林のことを気にかけてもらえて、保護の意識を高めることができる。変わったキャリアがある私だからこそ、いまは生物学と写真の橋渡しをして、より多くの読者に届けることが目標であり、使命だと思っています。

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おわり

ティム・レイマン(Tim Laman)

18歳まで日本で暮らし、山や海で多くの時間を過ごしたことで、自然に深い興味を抱くようになる。ハーバード大学で生物学の博士号を修得。ハーバード大学鳥類学研究室の研究員も務め、熱帯雨林と鳥類の生態に関する多数の論文を発表。世界各地の秘境を訪れ、科学的なデータを収集しながら写真を撮影している。北米自然写真協会「優秀写真家賞」(2009年)、BBCワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー賞入賞(1998,2001、2002、2005年)、ピクチャーズ・オブ・ザ・イヤー賞入賞(1998年)、ネイチャーズ・ベスト写真賞入賞(2001、2003、2006、2009年)など。写真家ティム・レイマンを紹介するページはこちら。