第4回 「ゴキブリを食べるメガネザル」撮影秘話

 カメラはごく普通のものですよ。ただし、リモートコントロールカメラの開発や防水ケース、ケーブルの製作などはナショナル ジオグラフィック協会のエンジニアリング部門にサポートしてもらうこともあります。あとは登山用具を木登りに使ったりするぐらい。身を隠す場所は自分で工夫したり、その土地流だったりさまざまですね。

――これまでお話をうかがったところでは、撮影にあたっては研究者やガイドの協力が重要みたいですが。

 もちろんです。その意味でもうひとつ、2010年6月号に掲載された「秘境 フォジャ山脈」の話をしましょう。

 フォジャ山脈はニューギニア島西部にあって、誰も住んだことがありません。当然、道もない。地形が険しいので、ヘリで飛ぶしかなく、着陸できる地点もごく狭い1カ所だけです。

 我々は新種を探すと同時に、生物多様性を記録するため単独の科学調査チームで乗り込みました。メンバーはカエル、鳥、昆虫、植物などの専門家で、私は鳥のチームの研究メンバーであるとともに、『ナショナル ジオグラフィック』の写真家でもありました。

 この科学調査では、キノボリカンガルーという極めて珍しい動物を撮影できました。研究者でさえ、実際に見たことがある人はほとんどいません。それまでにニューギニア島のパプアニューギニア側にいることは知られていましたが、フォジャ山脈のあるインドネシア側にいることは確かめられていませんでした。これも研究者に教えてもらったから撮れた写真です。野生のものではおそらく世界初の写真でしょう。とても興奮しましたよ。

――それは貴重な写真ですね。では、その話を次回にうかがいましょう。

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つづく

ティム・レイマン(Tim Laman)

18歳まで日本で暮らし、山や海で多くの時間を過ごしたことで、自然に深い興味を抱くようになる。ハーバード大学で生物学の博士号を修得。ハーバード大学鳥類学研究室の研究員も務め、熱帯雨林と鳥類の生態に関する多数の論文を発表。世界各地の秘境を訪れ、科学的なデータを収集しながら写真を撮影している。北米自然写真協会「優秀写真家賞」(2009年)、BBCワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー賞入賞(1998,2001、2002、2005年)、ピクチャーズ・オブ・ザ・イヤー賞入賞(1998年)、ネイチャーズ・ベスト写真賞入賞(2001、2003、2006、2009年)など。写真家ティム・レイマンを紹介するページはこちら。