第3回 その一瞬に、胸は高鳴る
――『ナショナル ジオグラフィック』の編集者にはじめて会ったときはどんな対応でしたか。
女性のフォトエディターにオフィスに案内されて、ボルネオ島の熱帯雨林と私の研究の話をしてから、写真を見てもらいました。ところが、スライド写真なのにライトテーブルどころかルーペも使わないんですよ。すぐに2、3枚を指して、「何枚かはいいのがあるわね。けれど、これではストーリーを組めないから、記事にはならないわ」。さらに「あなたが競わなきゃならない写真はこういうものなのよ」と、映写室に連れて行かれて、プロジェクターで見せられたのがフランス・ランティングのオウムの写真でした(笑)。
――その写真を見せられてどう感じました? がっかりしましたか?
いいえ。「時間は十分あるし、自分ならできる」と思ったんです。おまけに、彼女は「可能性はあるから、もしボルネオにまた行くなら、あなたがほしいだけフィルムを提供しましょう」と言ってくれて。
――確かに、それはポジティブな対応ですね。
私はまだ学生で、フィルムは安くなかったから、とてもありがたかったです。