第2回 掘削開始!史上最も深くまでドリルが到達した!

漆黒の闇が徐々に青く明けてくる時間が、緊張続きで疲れた心もいやしてくれる、ような気がします(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)

 いまから30年以上も前となる1978年5月11日。米国の科学掘削船「グローマー・チャレンジャー号」が、マリアナ海溝で掘削調査を実施しました。その時に、水深が7034mもある深海底を15.5mまで掘削したという記録が残っています。合わせたその距離は7049.5m。これが海洋科学掘削史上で最も深くまでドリルが到達した記録(海面からのドリルパイプ長)でした。わたしが生まれる前か後かは別として、いまから30年以上も昔のことですから、驚くべき記録でした。

 いま、「でした」といいました。そう、「ちきゅう」は、ここ日本海溝の水深6883.5mの深海底から掘削を開始し、さきほど7050m地点を、静かに、ゆっくりと、力強く超えました。先人の偉大な記録を塗り替えた瞬間でした。

 「No success without challenge」
 こんな心境を、いつだったか、航海中につぶやきました。一方で、常に未知の世界を探求しつづける科学の世界の隅っこに身を置くようになり、わたしは、(はっきりいって)「世界記録達成!」とか、「世界初!」とかいう心躍らせるはずの文句には、やや冷めた視線を持つようになってしまいました。

 なぜなら、わたしたちの本当のゴールは、そこにはありません。数字や記録は通過点です。お菓子の楽しいオマケです。

 あの地震と津波はなぜ起きたのか、を調べに。今日、「ちきゅう」に乗り込んでいる172名の仲間と一緒に、いまこの時間も、さらにこの先にあるだろう震源断層を目指して突き進んでいます。

それではまた。

地球深部探査船「ちきゅう」船上より
つぶやき編集長 https://twitter.com/Chikyu_JAMSTEC
(追伸)乾杯はコーラでした

「ちきゅう」はドライシップ(禁酒船)。乾杯はコーラで(提供:JAMSTEC/IODP)(写真クリックで拡大)

「ちきゅう」つぶやき編集長

JAMSTEC地球深部探査センターの普及広報担当。特設サイト「ちきゅうTV」やツイッターを担当していて、航海中に高井研さんから「つぶやき編集長」と命名された。地球深部探査船「ちきゅう」が完成した2005年にJAMSTEC地球深部探査センターに入門。以来、広報担当として計4回の研究航海に参加。「ちきゅう」を駆使した科学掘削航海を現場から伝えている。つぶやきが感傷的になり、つっこまれることもしばしば。