最終回 渡辺佑基「上陸、生ガキ、そして次の冒険のはじまり」

 このようにして長い南極観測の旅は終わり、日本での日常生活が戻ってきた。といっても、私のペンギン生態調査がこれで終わったわけではない。よく、「家に帰るまでが遠足ですよ」といわれるが、それと同じように、フィールドで得られたデータを解析し、論文にまとめて発表するまでが調査である。アデリーペンギンたちが、どのように海氷を利用し、あるいは海氷に妨げられながら、餌をとり、ヒナを育て、命を次世代につないでいったか。これから起こりうる、もしくはいま現に起こっているのかもしれない大きな環境変動に、ペンギンたちがどれほど柔軟に対応できるのか。データの海に潜り込んでじっくり考えようと思う。外に出る冒険は終わったが、内に入る冒険はいまから始まる。すべての冒険が無事におわり、研究成果を世に送り出すことができたのならば、またどこかで紹介したいと思う。そうしてまたいつか、次の謎を求めて、あのユーモアあふれるペンギンたちに会いに行けたらいい。

また会おう。次の冒険で。(撮影:渡辺佑基/協力:ニコンイメージングジャパン)(写真クリックで拡大)

おしまい

渡辺佑基

渡辺佑基(わたなべ・ゆうき)

1978年、岐阜県生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。世界の極地を飛び回り、データロガーを駆使して主に極域に生息する大型捕食動物の生理生態および種間比較を研究している。2011年「動物の泳ぐ速さを決めるサイズ効果を発見」(J. Anim. Ecol. 80, 57-68 (2011))が『Nature』の「News&Views」に紹介された。同年、学術分野全般で優れた実績を積み上げた人に贈られる山崎賞を受賞。

田邊優貴子

田邊優貴子(たなべ・ゆきこ)

1978年、青森市生まれ。2006年京都大学大学院博士課程退学後、2008年総合研究大学院大学博士課程修了。現在は、早稲田大学 高等研究所・助教。植物生理生態学者。博士(理学)。
小学生の頃から極北の地に憧れを抱き、大学4年生のときには真冬のアラスカ・ブルックス山脈麓のエスキモーの村で過ごした。それ以後もアラスカを訪れ、「人工の光合成システム」の研究者から、極地をフィールドにする研究者に転身する。
2007~2008年に第49次日本南極地域観測隊、2009~2010年に第51次隊に、2011~2012年に第53次隊に参加。2010年夏、2013年夏に北極・スバールバル諸島で野外調査を行うなど、極地を舞台に生態系の研究をしている。
ポプラビーチでエッセイ「すてきな 地球の果て」連載中
http://www.poplarbeech.com/chikyunohate/005708.html