第1回 あの地震はどうやって起きたのか、を調べに

ジムさんと並んで航海首席を務めているフレドリック・チェスター教授(テキサスA&M大学)が本研究ミッションを乗組員に解説中。乗船している全員が同じ目標をもってプロジェクトに臨みます  写真提供:JAMSTEC/IODP
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 だから今回、地震によって大きく動いた部分、つまり日本海溝の断層に温度計を設置し、その温度を測るのです。温度が分かれば、(手をスリスリしたのと同じように)そこから計算によって摩擦を求められます。そうすれば、断層の動き方がわかり、あの津波を起こした原因を説明できると考えています。

――原因として、どんな可能性が考えられますか?

 水平方向に50mも海底が動いたという緊急調査の結果は、当初はとても信じられませんでした。大きな滑りがあるということは、素直に考えれば摩擦係数は低いはずということになります。もし摩擦が高いとたくさん滑ることはできませんからね。

 地球の深い部分の断層が壊れて、それにつられて海底面近くが動いたのか。それとも海底面近くでも約1000年分ものひずみをためられるほど摩擦抵抗が高く、それが壊れて地震が起きたのか。

 昨年の巨大地震は、海底面の滑りがとても大きかっただけに、このふたつの仮説にはっきりと結果が出るはずです。そうすれば、東北の深海で起きたことが地球上の他の場所でも起きるかもしれないという理解につながるかもしれません。この決着を今回の「ちきゅう」による掘削調査でつけたいと、そう考えています。

――――――インタビューおわり――――――


 地震の1週間後には、今回の調査のアイデアは浮かんでいたのですね。
 大地震がどうやって起きたのか、いまはモリ教授にも分かっていません。彼ら地球科学者は、今回の掘削によって地球の声を聴き、この惑星が発する言葉を読み解こうとしています。

 さて、次回は、「事件は(毎日)現場で起こっているんだっ!」陸から遠く離れ孤独な戦いを続けている探査船で悩み苦しみながら、それでも時には笑顔がこぼれる漢(おとこ)たちの姿をお伝えしたいと思います。

 それではまた。

地球深部探査船「ちきゅう」船上より
つぶやき編集長 https://twitter.com/Chikyu_JAMSTEC
(追伸)陸ではもう、花見は終わりました?

ほんの少し陸地を離れれば、そこにあるのは海だけです。わたしもみなさんも暮らしている地球は、水の惑星なのです 写真提供:JAMSTEC/IODP
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もうひとつ、掘削海域で私たちを待っていたのは、空を覆い尽くさんばかりのカモメたちでした。ヘリデッキは彼らに乗っ取られてしまい、あの、その… よごれました 写真提供:JAMSTEC/IODP
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「ちきゅう」甲板に積み上げられたドリルパイプたち。この1本の長さ9.5m、直径15cmばかりの細いパイプを海面下8000mという地球の奥深くまで延々と繋ぎ震源断層まで掘削するという、ああ心細さよ。無事に届け。 写真提供:JAMSTEC/IODP
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チュービングと呼んでいる鉄管に温度計などのセンサを組み込み、掘削した孔内に設置しようという作戦。ただの鉄管ですが、気持ちがこもっています 写真提供:JAMSTEC/IODP
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掘削海域への到着後に私たちを待っていたのは春の嵐でした。最大瞬間風速は40m/sにも達し、もちろん本船だって激しく揺れます。うっ!となる試練も。 写真提供:JAMSTEC/IODP
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ブリッジでは、航海士が刻々と変わる気象、海象の状況を見極めながら本船の安全を守っています。感謝。 写真提供:JAMSTEC/IODP
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「ちきゅう」つぶやき編集長

JAMSTEC地球深部探査センターの普及広報担当。特設サイト「ちきゅうTV」やツイッターを担当していて、航海中に高井研さんから「つぶやき編集長」と命名された。地球深部探査船「ちきゅう」が完成した2005年にJAMSTEC地球深部探査センターに入門。以来、広報担当として計4回の研究航海に参加。「ちきゅう」を駆使した科学掘削航海を現場から伝えている。つぶやきが感傷的になり、つっこまれることもしばしば。