第18回 田邊優貴子「ただいま! そして、さようなら」

 これから1年間、越冬隊はほんの30名だけであの昭和基地で過ごすのかと思うと、なんとも言えない気持ちになります。楽しんでね、頑張れよ、元気でね、という気持ちと、あの南極という世界のすべての季節を見て、そこで時間を過ごすことができることへの羨ましさが入り交じった気持ちです。

 きっと1年後、みなたくましくなって、元気に帰ってくるのでしょう。

 さて、昨年の11月末から約4カ月間にわたってこの「南極なう!」を連載してきましたが、そろそろ筆を置くときがやってきました。

 これにて、南極なう!は終わりますが、私の南極研究はまだまだこれから。ずっとずっと続いてゆくのです。採取してきたばかりの湖の中の植物や水のサンプルを使って、南極湖沼の生態系の遷移過程や進化史を追求することになります。湖の底に設置してきたカメラから、また知られざる世界が見えてきたり、新しい発見があるかもしれません。

限られた人生の時間の中で、これから私は何度、あの大陸に立つことができるのでしょう。また数年後、きっと降り立てる日が来ることを願って。

どこの国でもない南極大陸だが、オーストラリアを経由するので公用パスポートが必要。中には「Japanese Antarctic Research Expedition(日本南極地域観測隊)」という表記がある。(写真クリックで拡大)

2012年4月1日 桜が開花し始めた東京・三鷹にて

渡辺佑基

渡辺佑基(わたなべ・ゆうき)

1978年、岐阜県生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。世界の極地を飛び回り、データロガーを駆使して主に極域に生息する大型捕食動物の生理生態および種間比較を研究している。2011年「動物の泳ぐ速さを決めるサイズ効果を発見」(J. Anim. Ecol. 80, 57-68 (2011))が『Nature』の「News&Views」に紹介された。同年、学術分野全般で優れた実績を積み上げた人に贈られる山崎賞を受賞。

田邊優貴子

田邊優貴子(たなべ・ゆきこ)

1978年、青森市生まれ。2006年京都大学大学院博士課程退学後、2008年総合研究大学院大学博士課程修了。現在は、早稲田大学 高等研究所・助教。植物生理生態学者。博士(理学)。
小学生の頃から極北の地に憧れを抱き、大学4年生のときには真冬のアラスカ・ブルックス山脈麓のエスキモーの村で過ごした。それ以後もアラスカを訪れ、「人工の光合成システム」の研究者から、極地をフィールドにする研究者に転身する。
2007~2008年に第49次日本南極地域観測隊、2009~2010年に第51次隊に、2011~2012年に第53次隊に参加。2010年夏、2013年夏に北極・スバールバル諸島で野外調査を行うなど、極地を舞台に生態系の研究をしている。
ポプラビーチでエッセイ「すてきな 地球の果て」連載中
http://www.poplarbeech.com/chikyunohate/005708.html