「暗闇の中に暗中模さく、俺を助けてくれ」

「君が俺のことを心配してくれて、思ってくれて、本当に俺は幸せものだと感じている」

 この冒険は自分の使命である、これだけはやらなければならない。そう自他に宣告するかのようにいって、日本を飛び出す。飛び出した後で、ほとんど毎日、日記のような手紙を書き、終りのほうで上に引用したような1行2行を書きしるす。全体の姿を見れば、まったくのわがまま、といえなくもない。

 しかし植村にあっては、使命のように冒険があり、出かけていけば唯一無二の心の支えとして公子さんがいる。両方が真実であり、両方にすがりつくようにして生きているのである。植村は、生真面目なほど、生きる拠り所を求めつづけ、それを必要としていた。冒険と日常生活がそんなふうに絡んでいるとき、日常生活の側に置かれて夫の冒険を見つめつづける公子さんの立場を思うと、この人はよほど聡明であるのに違いないという私の印象はいよいよ強まるのである。

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