第4章 1921-1956 カラー革命と第一期黄金時代

第10回 世界初の有人深海調査を支援(前編)

 午後1時。母船のクレーンに吊り下げられて、ビービとバートンが乗ったバチスフィアが進水。銅製のヘルメットで限界だった18メートルはあっという間に通過します。20……40……60……120……150……180メートル。このあたりからサーチライトが本領を発揮する暗さになりました。「ここまで沈んだことのある人間は死人ぐらいだろう」とビービ。

 そのあたりまでは順調でした。ところが、240メートルまできたときにビービは水圧への恐怖から潜行を停止します。「生涯に何度か、明らかに予感がすることがある。このときもそうだった」と直感にしたがって浮上。この日は調査を中止してしまいました。

 仕切りなおしは6月11日でした。このときは水深434メートルの場所で潜行し、見事、無事に海底まで到達します。その間に全身の発光器が燃えるように光るハダカイワシや、群れをなす巻貝、小さなイカ、ムネエソ、発光する小さな生物たちなどさまざまな生きものを目撃し、はじめての有人の深海調査は大成功に終わりました。

 翌々日の13日には「ニューヨーク・タイムズ」がリンドバーグや南極上空を飛んだリチャード・バードなどと並べて2人の成功を大々的に称賛しました。おかげで、2人は著名な探検家として知られるようになります。結果は大成功でしたが、ビービの目標はあくまで水深900メートル。彼のチャレンジはまだまだ終わりません。

つづく