第4章 1921-1956 カラー革命と第一期黄金時代

第10回 世界初の有人深海調査を支援(前編)

 世界ではじめて有人深海調査が行われたのは1930年でした。調査船の名前は「バチスフィア(bathysphere)」。「bathy」の語源はギリシャ語の「深い」で「sphere」は「球」、つまり、「深海の球体」です。開発したのは生物学者のウィリアム・ビービとエンジニア兼スポンサーのオーティス・バートンでした。

 深海調査をはじめる以前から、ビービは名の通った鳥類学者でした。ニューヨークのブロンクス動物園に所属し、未開のジャングルを探検しては鳥をはじめさまざまな生きものを調べて、一般向けに記事を書いて人気を得ていました。セオドア・ルーズベルト大統領も彼のファンだったそうです。

 1925年、ビービは48歳のときに海に目を向けはじめます。

   当初、彼は船で海に出て、さまざまな場所の生物を採集し、観察しました。なかには水深900メートルの海底も含まれていました。深海から引き揚げた網に、これまで見たこともない生物がたくさんいるのを見て、ビービは深海への夢を一気に膨らませます。

 この目で海の中を見てみたい。太陽の光が決して届かない暗闇の世界にどんな生きものがいるのか直接確かめたい。強く願ったビービは、銅製のヘルメットに空気を送る形で調査をはじめます。いわゆる「フーカ潜水」です。でも、銅製のヘルメットでは水深18メートルが限界でした。そりゃそうでしょう。ヘルメットだけで深海は無理に決まってます。