第22回 枯れ葉が飛び跳ねた!

 モンテベルデでの下見調査2日目。ぼくは、虫こぶを探しにバイオロジカルステーションから車で太平洋側へ10分ほど下ったところにあるバホ・デル・ティグレの森へ初めて足を踏み入れようとしていた。この森は、世界各国からの寄付によって保護・管理されている「子どもの永遠の森」の一部だ。

 車の後ろには土ぼこりが舞っている。同じモンテベルデの森でも、頂上付近やカリブ海側の斜面と比べると、太平洋側の斜面はかなり乾燥しているのである。

 森の入り口で車を止め、カメラ機材やビニール袋をぶら下げて林道を歩いていたときのこと。目の前にヒラヒラと枯れ葉が舞い降りてきた。

 さらに一歩近づいた瞬間、その枯れ葉はチョン!と飛び跳ねるように数十センチほど飛んで着地した。フタオチョウの仲間だ!

 ぼくはそこから1歩2歩3歩と後ずさりして、リュックをそ~っと下ろした。そしてカメラを手に地面に這いつくばった。からだの硬いぼくには、そこそこきつい姿勢。でも、落ち葉の音が聞こえただけで飛んでいってしまうチョウもいるので、慎重に慎重に地面を這うように近づいた。

 カシャリッ! 撮れた!

 蝶はシャッター音に反応せず、まだ枯れ葉の上にいる。ぼくが気づいていないと思っているのか。枯れ葉にまぎれているので、おそらく動かずにいるほうが安全なのだろう。

 ぼくは寝転がったまんま、20分以上この“生きた枯れ葉”の撮影に没頭した。
 虫こぶを探しに来たぼくは、その入り口でいきなり体力と時間を費やしてしまったのだが、ステキな出会いだった。



*子どもの永遠の森(Bosque Eterno de Los Ninos/BEN): 世界40カ国以上からの寄付によって購入・管理されているモンテベルデ生物保護区周辺の雲霧林、およそ2万2000haの保護地域。日本からはNGO「にっぽんこどものじゃんぐる」が支援している。https://sites.google.com/site/nipponjungle/

トガリバキノハ(タテハチョウ科:フタオチョウ亜科)
Consul electra, Pearly Leafwing Butterfly
舞い降りてしばらくすると、翅をしばらくの間開けていた。太陽の木漏れ日を翅に浴びて、体を温めているのだろう。キノハタテハ族(Anaeini)のカナエタテハ属(Consul)に分類されている。詳しくはぷてろんワールドを参照されたい。http://www.pteron-world.com/index.html
前翅長:約4 cm 撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
モンテベルデ・バイオロジカルステーションの正面の森
朝の6時半ごろ、外は未だ青白い。森の向こう側からニョキニョキと雲の柱が伸び始めてきていたので、山の反対側の斜面に日光が照りつけ始めているのが分かる。乾季でも、山頂付近の森はたっぷりと水分を蓄えているようだ。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
モンテベルデ・バイオロジカルステーションの正面の森
手前の斜面にも直射日光が注がれると、雲が発生し、モンテベルデの強風で、さまざまな動きを見せてくれる。乾季のモンテベルデでは、乾燥した森を太平洋側で、湿った森をカリブ海側で楽しむことができる。
撮影地:モンテベルデ、コスタリカ(写真クリックで拡大)
西田賢司

西田賢司(にしだ けんじ)

1972年、大阪府生まれ。中学卒業後に米国へ渡り、大学で生物学を専攻する。1998年からコスタリカ大学で蝶や蛾の生態を主に研究。昆虫を見つける目のよさに定評があり、東南アジアやオーストラリア、中南米での調査も依頼される。現在は、コスタリカの大学や世界各国の研究機関から依頼を受けて、昆虫の調査やプロジェクトに携わっている。第5回「モンベル・チャレンジ・アワード」受賞。著書に『わっ! ヘンな虫 探検昆虫学者の珍虫ファイル』(徳間書店)など。
本人のホームページはhttp://www.kenjinishida.net/jp/indexjp.html