第5回 好きで嫌いな地底世界 その(2)

モグラびと

 ナショジオの1997年2月号に「ニューヨーク地下探検」という興味深い特集記事がある。マンハッタンのつまりは狭い島に高層ビルの林立するニューヨークは、地上の建物ばかり印象が強いが、昔から地下の利用もさかんに行われていた。下水道をはじめ電気、ガス、水道、などの基本インフラ設備(総延長5000万キロメートルといわれている)が新旧複雑にまるでスパゲティのようにからんでいる。その深さは地下80階のレベルにまで至るというから気の遠くなるような話だ。

 この特集ではマンハッタンから160キロほども離れたキャッツキル山脈から新しい水道をひくためのトンネル工事を主に取材しているが、現場は地下200メートルである。地下工事は常に危険が伴う。この記事が掲載された時点で長さ29キロメートルまで工事が進んでいるが、それまでのあいだに1~2キロに1人の割合で犠牲者をだしてきたという。

 比較的浅いところに埋設されている水道管の7割近くは新しいものでも50年前、という老朽化の限度にきているから、ニューヨークでは殆ど毎日どこかで水道管が破裂して水を吹き上げているという。そんな映画を見た記憶がある。

人や車が行き交うマンハッタンの交差点の地下断面図。路上から地下鉄のホームまでの深さに電気や電話、ガス、暖房用スチーム、上下水道などの管や線が複雑に走っている。図の中で最も深い地下にあるレンガでできた古い下水道幹線は、大雨の時に上層から流れてくる雨水や下水の通り道になっている。1997年2月号特集「ニューヨーク地下探検」より。(画像クリックで拡大)