第4話  JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語

その4  最後の「むかつくんですよ!」はよく覚えている

これがJAMSTECでの電光石火攻撃でゲットした好熱菌。この細くてニョロニョロした好熱菌のおかげで、ボクはなめられずにすんだといっても過言であるまい。黒い棒線は5マイクロメートル(5/1000ミリメートル)。
(提供:高井研)

ある意味、イノウエさんに溜まっていた感情を吐き出したことでようやく、しこっていたようなわだかまりがなくなった。イノウエさんも最初はびっくりしていたが、その後、腹を割っていろいろ話す内に、分野は違えども同じ微生物ハンターの血が流れている人だとよくわかった。ボクは初めてJAMSTECでやっていける気がした。

そしてなんだかんだと言いながらちゃっかり、マリアナ海溝チャレンジャー海淵の泥をせしめたった。

せしめたモノはボクのモノ。マリアナ海溝の泥を使って、ボクは馬車馬のように実験を進めた。そしてそれから数日後、ボクの予想通りに、80℃近くの温度で増殖する好熱菌が生えてきた。

「オレは勝った!」(←何に?)。

ボクはJAMSTECにやってきて2週間以内に、論文のネタになる好熱菌を生やすことに成功した。そしてそれから半年も経たないうちにそのネタで最初の論文を書いた。



つづく(次回、「初めての「しんかい2000」」)

高井 研

高井 研(たかい けん)

1969年京都府生まれ。京都大学農学部の水産学科で微生物の研究を始め、1997年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者に。現在は、同機構、深海・地殻内生物圏研究プログラムのディレクターおよび、プレカンブリアンエコシステムラボラトリーユニットリーダー。2012年9月よりJAXA宇宙科学研究所客員教授を兼任。著書に『生命はなぜ生まれたのか――地球生物の起源の謎に迫る』(幻冬舎新書)など。本誌2011年2月号「人物ファイル」にも登場した。