第4話  JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語

その4  最後の「むかつくんですよ!」はよく覚えている

もし、世界最深部マリアナ海溝の泥にも超好熱菌が生きて残っていたら、それは海水による超好熱菌の運搬の一つの例証になるかもしれない。ボクはそう考えた。そして、JAMSTECでは前年にマリアナ海溝チャレンジャー海淵から泥を採取し、そのサンプルを液体窒素の中で保存していていることも分かった。

マリアナ海溝チャレンジャー海淵の世界最深部の泥には超好熱菌が生きていることを証明しよう、そうしよう。ボクは決めた。

徹夜明けの翌朝、待ちきれずに早速、イノウエさんに「マリアナ海溝チャレンジャー海淵の泥から超好熱菌の培養をさせて下さい」と許可をもらいに行った。研究グループ内とは言え、保存サンプルの使用には、リーダーの許可が必要だったからだ。

イノウエさんは苦虫を噛みつぶしたような顔で、「えー! キミがマリアナ海溝の貴重なサンプルを使うのかね。あれが、どれだけ貴重なサンプルかわかって言ってるのか? あのサンプルは決して無駄にはしたくないんだよ」と言った。

JAMSTECに来てからずっと感じていた「ヨソ者」扱いへの不満は頂点だったんだろう。そして、徹夜明けの疲れもあったんだろう。JAMSTECに来てからまだ数日に過ぎない新参者のボクだけど、もはや感情を抑えることができなかった。