第4話  JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語

その4  最後の「むかつくんですよ!」はよく覚えている

今は亡き「かいこう」が捉えた地球最深部の深海底。
(c)JAMSTEC

ボクはその日から徹夜で策を練り始めた。そして、これまでのJAMSTECの研究の中に、水深約1万1000mの世界最深部のマリアナ海溝の冷たい泥の中には、思いがけず50℃ぐらいの温度で増殖する好熱菌が多いという論文があるのを見つけた。しかも、その中にはかなり系統的に珍しい好熱菌が含まれていた。

当時、世界最深部マリアナ海溝の研究は、まさしくボクがアメリカ留学時代にニューヨークタイムズ紙の記事で見かけたように、1万1000m級無人潜水機を開発したJAMSTECの独壇場だった。もし、極めて低温の世界最深部の泥に、超好熱菌が生きていたら? こりゃ、それなりの研究ネタになるなとボクは思った。

ちょうどその頃、超好熱菌の研究の世界では、次のような研究が報告されていた。海底下の無酸素の高温環境で生息していた超好熱菌は、海底火山の噴火に伴って酸素に満ちた海に放出されると本来ならすぐ死ぬはず。なのに、海水が低温の場合はかなり長期間生き残るというのだ。

一方、世界中の様々な地域の海底熱水環境は、それぞれ地理的には隔絶しているにも関わらず、同じような超好熱菌が生息していることが知られていた。この現象を説明するためには、海の中で何らかの超好熱菌の運搬(伝播)メカニズムが存在している必要があるのだが、それが海底火山噴火と海水による超好熱菌の運搬ではないかと議論されていた。