第5回 ヒトの進化はアフリカ限定だった!

「──僕は日本国内の仕事から始めて、さらに朝鮮半島、中国、ベトナム、台湾などで発掘をしたり、DNAを調べたり、という仕事をしてきたんです。そうすると、そこで強烈に感じるのは、日本人とは何か、ってことなんですよ。ちょっと違う地域に住んでる人で、遺伝子も似てるのに文化は随分違うとか、常に日本人の起源を意識するんです。でも、南米まで飛んじゃうと、日本人はどうでもよくなってくる(笑)」

「──それで結局、人間って何だろうと考え始めるんです。亡くなった先代王のミイラがかしずかれ、次代王には何も残さないとか、我々から見たら不思議ですよね。でも、それは先祖崇拝でもある。僕らも位牌に手を合わせて先祖のことを思うわけで、そういうすごく基本的なところは、やっぱり人間って一緒で、普遍性があって……でも、特殊性もすごくあるんですよね。それで、普遍性と特殊性というのが、今、僕の中ではキーワードになっています。博物館ですから、特別展をやって人を呼ぶわけですが、その普遍性と特殊性に触れて欲しいというのが、1つのねらいなんですよね」

 インカのミイラ文化から始まって、アフリカを起源にする人類史に思いをはせる、という今回のお話はこれでおしまい。本来ならかけ離れたテーマが、一人の研究者の中では自然に接続している。篠田さんが言う普遍性と特殊性は、まさにコインの裏表だと感じる。

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おわり

国立科学博物館特別展「インカ帝国展」開催
2012年3月10日(土)から6月24日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で「インカ帝国展 - マチュピチュ「発見」100年」を開催します。日本版2011年4月号「インカ 気高き野望」に掲載されたミイラも「来日」して展示されます。特集のフォトギャラリーはこちら。開館時間、休館日ほか、特別展の詳細は公式ホームページをご覧ください。

篠田謙一(しのだ けんいち)

1955年、静岡県生れ。国立科学博物館 人類研究部 人類史研究グループ グループ長。医学博士。佐賀医科大学助教授、国立科学博物館人類第1研究室長を経て、09年より現職。DNAの分析により、人類のルーツや進化を解明する分子人類学が専門。主な研究テーマは日本人の起源とアンデス先住民の系統と社会構造。著書『日本人になった祖先たち──DNAから解明するその多元的構造』(NHKブックス)のほか、『骨の事典』(朝倉書店)、『日本列島の自然史』(東海大学出版会)などの共著がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合で「銀河へキックオフ」としてアニメ化される。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider