第4回 ミトコンドリアDNAでわかった人類の歴史

 そのためには、篠田さんが使ってきたミトコンドリアDNA分析の特質を知っておくべきだろう。

 というわけで、ミトコンドリアDNAについて、簡単に。

 まず、ミトコンドリアというのは、細胞内にあるエネルギーを生産する小器官だ。核とは別に独自のDNAを持っており、おそらくは細胞内に入り込んだ共生微生物が起源ではないかと言われている。DNAサイズは、1万6000塩基対ほどで、30億塩基対ものある核DNAと比べると格段に小さい(塩基や塩基対というのは、DNAの遺伝情報を構成する最小単位)。

 もう一点大事なのは、ミトコンドリアの遺伝子の伝達の仕方だ。核DNAなら、父親の精子と母親の卵がくっついて半分ずつの遺伝情報を受け継ぐわけだが、ミトコンドリアの場合はその方式をとらない。精子からは父親由来のミトコンドリアの遺伝情報は伝達されないので、結局、卵の中にあった母親のミトコンドリアだけが子に継承される。つまり、ミトコンドリアDNAの研究で辿ることができるのは、母系のみなのだ。

 人類史解明のためにミトコンドリアDNAを使うメリットを、篠田さんはこう説明する。