第4話  JAMSTEC新人ポスドクびんびん物語

その3  JAMSTEC初出勤で放置プレー

そうだボクもその学会には参加する予定だった。その国際会議は1週間かけて、南イタリアの小さな海辺の街をバスで転々と移動しながら、移動先で講演やポスター発表を少し行い、そして大半の時間はワインを飲んで騒ぐということを繰り返すだけという未だかつてないほど魅惑的・快楽的な学会で、ボクも物凄く楽しみにしていたのだった。妻とNHKのイタリア語会話で一生懸命勉強してイタリア語まで覚えたくらいだ。

しかし「10月1日に出勤しなさい」と言われたから泣く泣くキャンセルして、今ここにいるというのに。

またもや怒りが爆発しそうになったが、その女性研究者が、これからボクがお世話になる研究グループの事務・管理部門の部屋に連れて行ってくれたおかげで、ようやく出勤初日の形を整えることができた。そして、研究員達が仕事机を置く大部屋に案内して貰い、空いている場所に自分の仕事机を作り、ようやく居場所を見つけた。

落ち着いて冷静になってみると、ボクはJAMSTECに来た初日にして、「あぁ、ボクは別に望まれてここにいるわけではない」という事実を認識し、ひどく落ち込んだ気分になった。たしかに、身分としても居候だし、誰もボクのことを知っているわけではない。自分で勝手に舞い上がって、「JAMSTECに来てやったわ、オラ」みたいな気分だったかもしれないが、あくまでJAMSTECの人間からすれば「誰?アイツ?」的存在でしかない。自分で選んだこととは言え、「ヌルイ、ヌルすぎる!」と文句を言っていた京大の研究室の温かみがとても恋しく感じたんだ。