「ここ、僕だけしか入らないんです。古代の人骨の専用の部屋で、一番奥で作業します。人間のDNAを扱うので、もしも、だれかの体の一部、例えば、ふけですとか、皮膚の欠片ですとかが入ったら、コンタミ(汚染)になってしまうので」

 なるほど、昔の人骨や歯を材料に、人間のDNAを見ようとしているわけで、我々自身が持っている「人間のDNA」が汚染源になって、結果をかく乱してしまうことがありえるのだ。

 さて、このような研究環境のもと、最初に分析したのは、前述したシカンの遺跡から出た人骨からのもので、それは島田教授との共同論文になった。しかし、「人類史」を研究する篠田さんにとって、それは単に始まりでしかなかった。

「ある時代のシカンのことは分かった。でも、前の時代がわからないと、シカンがなぜできたのかわからない。そこで、前の時代をやると、今度は、シカンのあるペルーの北海岸だけじゃなくて他の地域もやらないとわからないと、どんどんどんどん何か話が大きくなってですね、ずるずる抜けられなくなって……」

 というふうに、篠田さんと南米アンデス地域との関係は、どんどん深まっていった。

 篠田さんの南米での研究成果を紹介しておく。それは、インカの起源にまつわるものだ。

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