篠田さんの国立科学博物館での立場は、「人類史研究グループ長」だ。
書いて字のごとく、人類の歴史を研究している。
方法は、ミトコンドリアDNAの解析(後で少しだけ詳しく述べる)。つまり遺伝子の研究で、我々、人類がどういう来歴を辿ってきたのか、もっとローカルには「日本人」がどういう道筋で形成されたのかをテーマにしてきた。
アンデスのミイラとは、どのように出会い、どんな調査研究をしてきたのだろう。
話は1998年にさかのぼる。
「まだ国立科学博物館に来る前だったんですが、当時の博物館の先生と一緒に研究をしていたんですね。アンデスの展覧会をやるのでDNAの分析もしたいと言われて、OKしたのが最初でした。じゃあ、歯を送ってください、と頼んだら、かわりに送られてきたのが、航空券だったと(笑)。最初、アンデスに行くつもりもなかったんですけど、まあ、しょうがないかと。しかし、何も分からないんで、成田空港で『地球の歩き方』を買ったくらいです。で、実際に行ってみますと、1回で終わるつもりが、全然終われなくて。そのうち、こちらに転勤になったので、ますます本格的にやるようになったという流れですね」