第1回 インカ帝国の拡大はミイラのしわざ!?

 ミイラ文化が、インカ帝国の版図の拡大に直接的な形で影響していたかもしれない、というのには驚いた。ちなみに、インカ帝国を滅ぼしたスペイン人による記述によると12代の皇帝がミイラにされていたというが、確実なのは4代だという。それらも、スペイン人によって破壊され、今はない。もっとも、どこかに隠されていると信じて探す人は後を絶たないそうだが。

 いずれにもしても、ぼくとしては、アンデスのミイラをめぐる「衝撃の事実」を知った気分である。

 死後も、かしずかれ、着替えさせられたり、食事をさせられたり。晴れた日には輿(こし)に乗って市中を練り歩き、お互いに会うと、挨拶を交わす。「死後も生きている」ミイラというのは、想像を絶しており、それゆえ想像力をかき立てるのだった。

つづく

国立科学博物館特別展「インカ帝国展」開催
2012年3月10日(土)から6月24日(日)まで、東京上野の国立科学博物館で「インカ帝国展 - マチュピチュ「発見」100年」を開催します。日本版2011年4月号「インカ 気高き野望」に掲載されたミイラも「来日」して展示されます。特集のフォトギャラリーはこちら。開館時間、休館日ほか、特別展の詳細は公式ホームページをご覧ください。

篠田謙一(しのだ けんいち)

1955年、静岡県生れ。国立科学博物館 人類研究部 人類史研究グループ グループ長。医学博士。佐賀医科大学助教授、国立科学博物館人類第1研究室長を経て、09年より現職。DNAの分析により、人類のルーツや進化を解明する分子人類学が専門。主な研究テーマは日本人の起源とアンデス先住民の系統と社会構造。著書『日本人になった祖先たち──DNAから解明するその多元的構造』(NHKブックス)のほか、『骨の事典』(朝倉書店)、『日本列島の自然史』(東海大学出版会)などの共著がある。

川端裕人(かわばた ひろと)

1964年、兵庫県明石市生まれ。千葉県千葉市育ち。文筆家。小説作品に、少年たちの川をめぐる物語『川の名前』(ハヤカワ文庫JA)、感染症制圧の10日間を描いた小説『エピデミック』(角川文庫)、数学史上最大の難問に挑む少年少女を描いたファンタジー『算数宇宙の冒険・アリスメトリック!』(実業之日本社文庫)など。ノンフィクションに、自身の体験を元にした『PTA再活用論 ──悩ましき現実を超えて』(中公新書クラレ)、アメリカの動物園をめぐる『動物園にできること』(文春文庫)など。サッカー小説『銀河のワールドカップ』風のダンデライオン 銀河のワールドカップ ガールズ』(ともに集英社文庫)は、4月よりNHK総合で「銀河へキックオフ」としてアニメ化される。
ブログ「リヴァイアさん、日々のわざ」。ツイッターアカウント@Rsider