第1回 インカ帝国の拡大はミイラのしわざ!?

 国立科学博物館自体は東京の上野にあるわけだが、研究部門が置かれているのは茨城県つくば市だ。昨年、東京の新宿から移転したばかりで、真新しく大きな建物だった。その中には巨大な収蔵庫もあり、篠田さんの研究対象である、各地で出土した人骨などが所狭しと収納されていた。同時に、分子生物学的な研究のため最新の機器をそろえたラボもあり、土臭さと「理科室」ぽさを同時に感じる、不思議な空間だった。

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 ちなみに、篠田さんの専門は、発掘された骨やミイラのミトコンドリアDNAを分析して人類史を解明することだ。アンデスのミイラだけでなく、様々な土地の人骨などを使い、人類の系統関係を解き明かしてきた。アフリカ大陸を出た人類がどのようなルートで世界中に広がっていったのか、研究からあぶり出される「大きな絵」はロマンにあふれている。でも、なにはともあれ、まずは「アンデスのミイラ」そのものの来歴について教えてもらおう。

「ミイラの起源というのは、別に作ろうと思って作ったわけじゃないはずなんですね。世界で最も乾燥していると言われるアタカマ砂漠では、おそらく、普通に埋葬するとミイラになっちゃうんです」

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 と篠田さんは、なんだか身も蓋もない「ミイラの起源」を述べた。

 たしかに、滅多に雨の降らない砂漠で人が死ぬと、腐るよりも先に乾燥して、ミイラ化してしまうかもしれない。まったく合理的な説明だ。

 篠田さんは続ける。