第1回 インカ帝国の拡大はミイラのしわざ!?

 エジプトのミイラの起源は5000年前であるのに対して、アタカマ砂漠では8000年から9000年前にもさかのぼるそうだ。とすると、実は新大陸・南米のミイラというのは、実に由緒正しい素性の持ち主といえそうだ。

 冒頭に記した500年前のアンデス高地のミイラは、ミイラ文化発祥の地であるアタカマ砂漠の乾燥地帯ではなく、雲霧林と呼ばれる霧や雨の多い高地で、保存に不向きであるにもかかわらず、あえてミイラを作っている。「三大」の名を冠されるだけあって、どうやら「ミイラはエジプト」と考えてしまうステレオタイプな知識からは想像できないくらい、複雑で含蓄深い背景がありそうだ。

 1998年から南米のミイラや人骨をもちいて人類学の研究を行っている国立科学博物館人類研究部の篠田謙一・人類史研究グループ長に、お話を伺った。

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