第1回 インカ帝国の拡大はミイラのしわざ!?

 各者一様に、膝を抱え、肘を曲げている。

 手首や肘のあたりを縄で縛られ、おそらくは足も同様だと思われる。

 全員、皮膚はきれいに残っており、髪の毛は剃られている。歯は実に保存状態がよさそうだ。

 ムンクの有名な絵画「叫び」を思わせる表情にはぎょっとさせられるが、死後硬直で咬筋が固まってしまったせいで、実際にこのような表情で苦悶しながら息絶えたわけではない。

2011年4月号「インカ 気高き野望」に掲載されたチャチャポヤ地方のミイラたち。国立科学博物館の「インカ帝国展」のためにその一部が「来日」する。(c)Robert Clark/National Geographic Stock(写真クリックで拡大)
眼球が残るミイラ。撮影:義井豊 《ミイラ》 15~16世紀 レイメバンバ博物館(写真クリックで拡大)

 ある者の、落ちくぼんだ眼窩の奥には、眼球がそのまま乾燥して残っている。眼球は乾燥する過程ですぐに潰れてしまうので、これはとても珍しい。

 バードキャッチャーという「個人名」で呼ばれる者は、鳥を捕らえる網を持っており、生前そのような職業だったのだろうと推測される。同時に、耳飾りができるよう耳を大きくしていることから、インカ帝国のオレホン(貴族)だったのではないかとも言われている。