第9章 北極点単独行――冒険家にとっての記録 後編

 北極点に初めて到達したのは、先にもふれたように、1909年、アメリカのロバート・ピアリである。(フレデリック・クックは自分のほうが先、と主張したが、現在ではピアリの到達が定説になっている。)

 ピアリ以後の北極点到達をざっと見てみよう。

 1926年、バード(アメリカ)が飛行機で北極点往復。
 1958年、アメリカの原子力潜水艦ノーチラスが北極点を通過して北極海を横断。
 1968年、アメリカのプレーステッド隊がスノーモービルで。
 1969年、イギリスのハーバート隊が犬橇で。
 1971年、イタリアのモンジーノ隊が犬橇で。
 1978年、日大隊が犬橇で。同年、植村直己が犬橇、単独で。
 ついでに記しておくと、79年、ソ連隊がスキーによって。87年、風間深志がバイクによって、北極点に到達している。

1978年9月号で表紙を飾ったときの記事のタイトルも「Solo to the North Pole」だった。(写真クリックで拡大)

 こうしてみると、植村の単独、犬橇での到達は、単独という点がひときわ光彩を放つ記録であることがわかる。「単独で」という冒険は植村以前に誰もやりとげていない。まぎれもなく植村の偉業である。

 しかし別の角度から見ると、それまで誰もやっていないことの実現に価値を置く冒険家に(現代の冒険家に)、めざすべき行動の範囲はきわめて狭くなっているのは事実なのである。「犬橇による単独行」しか、誰もやらなかったことは残されていなかった、ともいえるのである。