第13回 田邊優貴子「落ちたのは、きっと好き過ぎたから」

2月に潜水調査を予定している湖のうちの1つ、スカルブスネスにある湖「なまず池」。まだまだ氷がかなり残っている。(写真クリックで拡大)

 それにしても冗談抜きに、アザラシの真似はきわめて重要なのです。

 なぜなら、薄くシャーベット状になっている氷は、もがくとただ割れるばかりで、なかなか水中から上がることができないからです。しかも、そんなことをバタバタとやっているうちに、0℃近くの水によって急激に体が冷えてくるので、もしかすると焦ってパニックを起こしかねません。

 そこで、体全体を使って腹這いをすることによって、氷に加わる力を分散させる「アザラシ式」が有効となるわけです。

 長池は今後、潜水調査をする湖。
 期せずして少し早めの水中偵察をすることができたのでした。

 もしかすると、懐の深い長池の神が、野外生活で汚れつつある私をちょうどいい頃合いで入浴させてくれたのかもしれません。

 まあ、なんというか、少し体がすっきりしたのは事実です。

深夜23時、雪鳥池に赤く染まった山が映し出された。(写真クリックで拡大)

2012年1月28日 スカルブスネスにて

渡辺佑基

渡辺佑基(わたなべ・ゆうき)

1978年、岐阜県生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。世界の極地を飛び回り、データロガーを駆使して主に極域に生息する大型捕食動物の生理生態および種間比較を研究している。2011年「動物の泳ぐ速さを決めるサイズ効果を発見」(J. Anim. Ecol. 80, 57-68 (2011))が『Nature』の「News&Views」に紹介された。同年、学術分野全般で優れた実績を積み上げた人に贈られる山崎賞を受賞。

田邊優貴子

田邊優貴子(たなべ・ゆきこ)

1978年、青森市生まれ。2006年京都大学大学院博士課程退学後、2008年総合研究大学院大学博士課程修了。現在は、早稲田大学 高等研究所・助教。植物生理生態学者。博士(理学)。
小学生の頃から極北の地に憧れを抱き、大学4年生のときには真冬のアラスカ・ブルックス山脈麓のエスキモーの村で過ごした。それ以後もアラスカを訪れ、「人工の光合成システム」の研究者から、極地をフィールドにする研究者に転身する。
2007~2008年に第49次日本南極地域観測隊、2009~2010年に第51次隊に、2011~2012年に第53次隊に参加。2010年夏、2013年夏に北極・スバールバル諸島で野外調査を行うなど、極地を舞台に生態系の研究をしている。
ポプラビーチでエッセイ「すてきな 地球の果て」連載中
http://www.poplarbeech.com/chikyunohate/005708.html