第13回 田邊優貴子「落ちたのは、きっと好き過ぎたから」
突然、地球の重力を感じなくなりました。
ん?! なんだ??
あれ? 体が冷たいぞ。
なんと私は薄氷を突き破って、湖の中に落ちたのでした。
幸い歩いていたところが湖岸に近かったおかげで、水に浸かったのはみぞおちまで。
おお、そういうことか・・・
私は冷静に状況を把握しました。
ここは先達の手法を踏襲してここを脱出するしかない。
先達とは、この水と氷の世界の住人であるウェッデルアザラシのこと。
私は迷わず彼らの真似をし、スルリと氷の穴から氷上に這い出て、ことなきを得たのでした。