恐ろしいほど音の少ないなか、雪鳥沢のガレ場を歩いていたときのことです。

 突然、足元の岩から大きな鳴き声が!
 私は本当にギョッとして、その場で飛び上がってしまいました。それはきっと、陸上部の走り幅跳び選手だった私の現役時代から見ても、驚異の跳躍力だったはずです。

 よく見ると、私が踏んでいた直径70cmほどの岩には、直径15cmの穴が2つあいています。顔を近づけて穴の中を覗いてみると・・・真っ白な雪見だいふくか鏡餅のような物体が。さらにグイッと覗き込むと、真っ黒でウルウルとしたつぶらな瞳と目が合いました。不安げな表情でこちらを見ています。

 スッと顔を隠し、その岩のそばで息をひそめて数分間待った後、こっそりとコンパクトデジカメを穴の中に入れると、岩の洞窟で静かに暮らすユキドリの姿が写っていました。彼らの日常を垣間見たような気分でした。

岩窟の巣でひっそりとたたずむユキドリ。(写真クリックで拡大)

2012年1月20日 スカルブスネスにて

渡辺佑基

渡辺佑基(わたなべ・ゆうき)

1978年、岐阜県生まれ。国立極地研究所生物圏研究グループ助教。世界の極地を飛び回り、データロガーを駆使して主に極域に生息する大型捕食動物の生理生態および種間比較を研究している。2011年「動物の泳ぐ速さを決めるサイズ効果を発見」(J. Anim. Ecol. 80, 57-68 (2011))が『Nature』の「News&Views」に紹介された。同年、学術分野全般で優れた実績を積み上げた人に贈られる山崎賞を受賞。

田邊優貴子

田邊優貴子(たなべ・ゆきこ)

1978年、青森市生まれ。2006年京都大学大学院博士課程退学後、2008年総合研究大学院大学博士課程修了。現在は、早稲田大学 高等研究所・助教。植物生理生態学者。博士(理学)。
小学生の頃から極北の地に憧れを抱き、大学4年生のときには真冬のアラスカ・ブルックス山脈麓のエスキモーの村で過ごした。それ以後もアラスカを訪れ、「人工の光合成システム」の研究者から、極地をフィールドにする研究者に転身する。
2007~2008年に第49次日本南極地域観測隊、2009~2010年に第51次隊に、2011~2012年に第53次隊に参加。2010年夏、2013年夏に北極・スバールバル諸島で野外調査を行うなど、極地を舞台に生態系の研究をしている。
ポプラビーチでエッセイ「すてきな 地球の果て」連載中
http://www.poplarbeech.com/chikyunohate/005708.html

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