第4回 好きで嫌いな地底世界 その(1)

ぬるぬる長物手足いっぱい生物

 落語の「饅頭こわい」は、例によって町内の暇な連中が集まって「世の中で何が怖いか」を話すところからはじまる。ヘビが怖いという奴がいればミミズが怖い、クモが怖い、ナメクジが怖い、といろいろ出てくる。そのなかで「饅頭」が怖い、と言いだす奴がいて噺がはじまる。

 噺のなかで、人間が何か怖いと思うのは、生まれたときに自分のエナ(胎盤のこと)を埋めた上を最初に通ったものを怖いと思うようになる、という説明がある。むかしは自分の家でお産をしたから胎盤はたいてい縁の下などに埋めていたのだろう。だから「饅頭」が怖い、といった人はエナの上に最初に饅頭がころがっていったことになる。ころがる饅頭もなかなか難しいだろうけれど。

 ミミズだのヘビだのが怖いといっているうちはまだ単純なもので、この怖さが複雑化して連続化する「恐怖症」というものになるといろいろ面倒なことになる。

『恐怖症』を調べると200ぐらいの症状があるという。ヒトはいろいろだからダイコンオロシを見ると失神する者もいればノコギリのギザギザを見るともう一歩も歩けない、というヒトもいる(はずだ)。ほんの軽い気分的なものから連続治療の必要な精神病に近い重いものまで本当にさまざまで、これらを列記していってもあまり意味はないようだ。