(写真提供:Alain Robert)(写真クリックで拡大)

 落ちる寸前までいくと、強制的に時間の感覚が変えられてしまう。実際の時間の流れではなく、相対的な時間。

 自分の意志に関わらず。時間の流れる感覚が変わっていくのです。嫌でもそれに従わなくてはならない。僕が感じる極限状態での恐怖とは、そういう感覚です。

 その瞬間を抜け出せば、あとは楽。生き延びられるわけですから。

 相手が岩山かビルかは関係ない。自分自身を危険にさらし、それを乗り越えて生き残ること、その恐怖の瞬間に打ち勝つことに、僕はおもしろみと喜びを感じているのです。

 そして、その恐怖に挑むことが、自分にとっての自由だと思っている。

――「恐怖に挑むことが自由の証」とは、冒険家ならではの言葉ですね。次は、ロベールさんの少年時代についてうかがいましょう。

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つづく

アラン・ロベール(Alain Robert)

1962年、フランス生まれ。11歳でクライミングを始め、94年にシカゴのシティバンクビル(187m)を皮切りに世界の高層建築物への登頂を開始。96年エッフェル塔(313m)、97年シドニー・タワー(305m)などを制覇し、99年には当時世界最高のシカゴのシアーズ・タワー(442m)の登頂に成功した。1998年には新宿センタービルを登り、逮捕されている。2004年、台湾の台北101(509m)が世界最高記録を更新するとすぐに登頂。2010年には命綱なしに100以上の高層建築物を登ったとしてギネスブックに登録され、2011年に世界最高のビルであるドバイのブルジュ・ハリファ(828m)を登りきり、この記録もギネスブックに登録された。同年、世界の冒険者や挑戦者を表彰する「ファウストA.G.アワード」のファウスト挑戦者賞を受賞している(受賞式スピーチの動画はhttp://www.faust-ag.jp/quest/quest025/ )。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。

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