第1回 「でも、恐怖という感覚は悪くない」

指を2センチかけるスペースさえあればいい。
(写真提供:Alain Robert)(写真クリックで拡大)

 超高層ビルのフリークライミングなんて、誰もやっていないことですからね。それから、自然の岩山と、人工のビルと両方に登ることが、クライマーとしての僕のスタイルになった。

――直立したビルの壁面を登るのは、岩山より怖いのではないですか。

 指先2cmをかけられるスペースがあれば、登れますよ。

 もちろん、強い恐怖を感じることもある。落ちる寸前という状態になったら、それはすごく怖い。

 でも、恐怖という感覚は悪くない。人間は恐怖を感じたときに、一番生きていると実感するものだと思う。僕にとっては、死ぬことと、ベッドの上で寝ている状態は同じようなものなんですよ(笑)。

――「もう落ちる」という極限の状態がどういうものか、もう少し詳しく聞かせてください。

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※「冒険・挑戦・貢献」を活動のテーマに掲げる「ファウスト・アドベンチャラーズ・ギルド」が、世界の冒険者や挑戦者を応援するために設けた表彰制度。2011年が第3回。表彰式の模様はhttp://www.faust-ag.jp/quest/quest025/でご覧になれます。

つづく

アラン・ロベール(Alain Robert)

1962年、フランス生まれ。11歳でクライミングを始め、94年にシカゴのシティバンクビル(187m)を皮切りに世界の高層建築物への登頂を開始。96年エッフェル塔(313m)、97年シドニー・タワー(305m)などを制覇し、99年には当時世界最高のシカゴのシアーズ・タワー(442m)の登頂に成功した。1998年には新宿センタービルを登り、逮捕されている。2004年、台湾の台北101(509m)が世界最高記録を更新するとすぐに登頂。2010年には命綱なしに100以上の高層建築物を登ったとしてギネスブックに登録され、2011年に世界最高のビルであるドバイのブルジュ・ハリファ(828m)を登りきり、この記録もギネスブックに登録された。同年、世界の冒険者や挑戦者を表彰する「ファウストA.G.アワード」のファウスト挑戦者賞を受賞している(受賞式スピーチの動画はhttp://www.faust-ag.jp/quest/quest025/ )。


高橋盛男(たかはし もりお)

1957年、新潟県生まれ。フリーランスライター。自動車専門誌の編集を手がけたのちフリーライターに。JR東日本新幹線車内誌「トランヴェール」、プレジデント社「プレジデント」「プレジデントファミリー」などに執筆。