第1回 「でも、恐怖という感覚は悪くない」

 強く何かを感じたということではないですね。

 実は、そのドキュメンタリーの契約が、ビルを4つ登ることだったんです。しかも、命綱なしで。だから、登らざるを得なかった(笑)。

――命綱なしも契約だったのですか。無許可で登るゲリラ的なやり方も?

 最初は、きちんと許可を取って登る手はずでした。しかし、どうしても許可が下りない。しかたがないから、許可のないまま見切り発車したというのが実際のところです。スポンサーの時計会社も、それを了解していました。

――しかし、契約の4棟にとどまらず、チャレンジを続け、これまで登ったビルは世界の130カ所を超えるとか。

 今にして思うと、タイミングがよかったのかもしれません。

 11歳からクライミングを始めて32歳になるまで20年以上、命綱なしで難所といわれる岩壁に挑んできましたからね。難しいことをやり尽くしてしまったという感覚が、当時あったんです。 

 新しいことにチャレンジする良い機会だと思いました。悪くない提案だと。