第10回 田邊優貴子「シーサイドテラス きざはし」

深夜、斜めから差し込む白夜の光で幻想的な色に染まった世界にアデリーペンギンたちが現れた。(写真クリックで拡大)

 クリスマスを迎える頃、砕氷船しらせは分厚くて乱れた氷の海に阻まれ、私たちはなかなか野外調査地へ出発できず、ヤキモキしていました。しかし去る12月28日、ついに、ついに南極大陸に上陸することができました。

 南極海の航海中はずっと悪天候が続いていましたが、野外調査出発前日になると空はすっかり晴れ上がり、深夜には氷の海がピンクと紫が混じり合った幻想的な色に染まりました。耳を澄ますと、遠くのほうでアデリーペンギンの群れが鳴く声が聞こえたので、私も鳴き真似をして呼んでみると、彼らはものすごい勢いで近くまで走り寄ってきたのです。

 なんだか心が通じたような瞬間でした。そして斜めから差す光に照らされたアデリーペンギンたちはとても美しく、私は寒さも忘れてしばらく見とれてしまいました。

 あ、しかしこれはもはや昨年の出来事になってしまいましたね。