第1回 遺伝か環境か、それがモンダイだ

 その上で、環境というのはどういうものを指すかというと──、まず最初にあるのは胎内環境であり、次いで家庭環境だ。胎児の頃は環境といえば子宮内のことだろうし、乳児のあいだ、生活環境の多くが家庭環境といえるだろう。その後、年齢が上になると、生活空間が多様化し、同じ双子といえども、違った環境で違った経験をすることが増える。学校、職場、さらには個々人が築く家庭などなど。なお、なんらかの事情で、別の家庭で育てられる双子もいるであろうが、安藤さんの研究の対象にはなっていない。

 さて、こういった前提を押さえた上で、双生児法と呼ばれる安藤さんの研究の手法は、こんなかんじ。

「一卵性と二卵性の双子の組をたくさん集めて、空間能力や言語能力といった一般知能(IQ)や、パーソナリティについて比較するわけです。例えば知能テストをして、一卵性の双子と二卵性の双子とのあいだで、それぞれスコアがどれだけ類似するか求めます。もしも遺伝要因があるなら、100%遺伝子が同じ一卵性の方が、50%の二卵性よりも、強く類似すると想定できます。逆に、同じ家庭で育った環境の影響だとしたら、一卵性でも二卵性でも変わりなく出てくるはずですから」

 安藤さんの説明は、今世界中で行われている同種の研究の基本的な着想の部分だ。本当は、より正確な結論にたどり着くために、ややこしい統計的処理をしなければならないことが多いわけだが、我々はこの「考え方」の基本の部分を理解していればいいだろう。