第3話  JAMSTECへの道 後編

その4  タカイ君、騙されてるんちゃうやろな?

そしてもう一つカタをつけなければならない問題が明らかになった。JAMSTECのアノ話だ。日本学術振興会のポスドクを受けるか断るかを早急に返事しなければならなかった。そして、その話を持ち出すには、日本学術振興会のポスドクをとるか、JAMSTECに行くことにするか、まず自分のなかで決断をしなければならなかった。

実は、ボクはそのとき、JAMSTECの話は断ろうと決断した。理由はいくつかあったが、一番重要なポイントは、JAMSTECの微生物研究の中身や研究室について、よく知らなかったことだった。海外での存外に高い評価以外には、「しんかい6500」や「かいこう」、そして高温高圧培養システムがあるということぐらいしか分かっていなかった。それに、深海熱水の研究は諦めきれなかったけれど、高温環境の微生物生態の研究なら、京都大学でも十分できるし、少し自分でやってみたいこともあった。

長い逡巡の末、ようやく意を決して、カトーさんに電話を掛けた。カトーさんが出た。

「京都大学のタカイですけど、あのー、アメリカの学会の時、お誘い頂いた件で電話しました」

カトーさん「あー、あの件ね。うんうん、覚えていますよー。でさー、実は申し訳ないんだけど、あれからあの話ねー、なくなっちゃったんだよねー。なんか、今年は人採れないとか言われちゃってサー。ホントごめんねー。でもさ、あのー、科学技術振興事業団というところにね、外部資金のポスドクっていうのがあるんだよ。どうしてもJAMSTECに来たいならアレに応募しなよ。じゃ幸運を祈ります」

簡単ではあるが、できるだけ記憶に忠実に再現してみた。