植村の『青春を山に賭けて』(文春文庫)では、海外放浪旅行の費用については、かなりあいまいな記述になっている。

 アメリカまでの片道切符の10万円をつくるのに手いっぱいだった。大学4年の後半、工事現場のアルバイトに精出したが、10万円を払い込むと、東京での生活費すらなくなった。くわしく説明しているわけではないが、およそ右のように受け取れる文章である。

 ところが、郷里で聞いた長兄の修氏の話は少し違っていた。

最初の渡航地であるアメリカでは、ヨーロッパへ渡る資金を集めるためにカリフォルニアの農場で働いた。仕事仲間だったメキシコの出稼ぎ労働者たちと。
(写真提供:文藝春秋 (c) Bungeishunju)(写真クリックで拡大)

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