第7回 渡辺佑基「ヒヤリ!」

 4カ月間にもわたる南極観測で怖いのはパソコンやカメラなど精密機器のトラブルだ。何か不具合が起きてもサービスセンターには送れない。船内のインターネットは電子メールに限られるので解決法を検索することもできないし、たとえ解決法がわかっても必要な道具を揃えられる望みは薄い。そうしてもしも序盤でカメラが使用不能になってしまったら、その後やってくる白く輝く氷山や、行列をなすペンギンや、夜空を彩るオーロラなどの大スペクタクルをキーと歯ガミしながら眺めることになる。いや、本当にそうなりかけた。こともあろうに自分の愚かなミスで――。 

 絞りを絞って撮影すると画面の端にちいさな灰色の点がポツンとつくことに気付いた。イメージセンサーの汚れである。といっても、よく見れば確かにあるなという程度で、気にせず放っておけばよかったのだ。カメラの整備法などろくに知らないくせに、つい欲を出してしまった。

 スプレー式のエアークリーナーで掃除してみることにした。イメージセンサーはフィルムに相当するデジカメの心臓部。しかもフィルムと違って取り換えがきかないから、少しでも傷つけたらお手上げの超精密パーツである。こわごわとレンズを外し、ミラーを上げて小さな太陽光パネルのようなセンサーを露出させる。埃の入らないようカメラを下に向け、エアークリーナーを真下から上向きに吹きつける。噴射口からシューと風が出てセンサーの表面についたゴミを吹き飛ばす――はずであった。