――もしかしたら、世界のどこかに自分の知らない双子のきょうだいがいることもあるのでしょうか?

 ええ、ありうると思いますよ。ミネソタ大学では、1979年以降、別々に育った双子に関する研究を行ってきました。その結果、130組を超える双子が養子に出され別々に育てられており、多くの場合、当人たちは事情を知りませんでした。ほとんどは母親が出産時に亡くなった、あるいは両親に二人の子どもを育てる経済力がないといった理由で、意図的に別々に育てられたケースです。でも中にはまれに――私は9件知っていますが――混雑した新生児室で単生児が双子の片方と取り違えられて“二卵性”とみなされ、後にまったく血縁関係がないとわかったケースもあります。こうした場合、本当の双子を再会させることが、必ずしも幸せな結果を生むとは限りません。本人たち、そして家族のアイデンティティーが突然打ち砕かれてしまうわけですから。

――研究してきた中で最も印象に残っているケースはどんなものですか?

 なんといっても、オスカーとジャックですね。二人は英国領だったトリニダード島でルーマニア人の父親とドイツ人の母親のもとに生まれ、間もなく別々の人生を歩むことになりました。二人が生後6カ月だった1933年、母親はオスカーとその姉を連れてナチス政権下のドイツに戻り、ジャックは父親のもとに残されたのです。オスカーはカトリック教徒として育てられてヒトラー青年隊の一員となり、ジャックはユダヤ教徒として育ちイスラエル軍に入りました。

――それは極端に異なる状況ですね。二人は再会したんですか?

 ええ。成長した二人は戦争後に再会しましたが、最初の対面ではうまが合いませんでした。しかし1979年にミネソタ大学の調査に参加したあと、二人は一緒に過ごす時間を増やしていきました。1997年にオスカーが肺がんで亡くなったとき、ジャックは悲しみに打ちひしがれました。彼らのケースで私が心を打たれるのは、二人がまったく異なる政治および歴史的背景で育てられたことです。普通なら、そこまで違う相手と親しくなろうとはしません。オスカーとジャックは、お互いに同じような癖や習慣がたくさんあることに気づきました。一人は父親、一人は祖母の手で、まったく異なる文化の下で育てられたにもかかわらず、非常によく似ていたのです。そこが、離れて育った一卵性双生児の興味深い点ですね。遺伝と環境がどのように組み合わさって人間の行動に影響を与えるかという問題を解明するうえで、新たな指針を与えてくれる。だからこそ、彼らを研究するのはきわめて意義深いことなのです。

 双子の研究についてさらに詳しく知りたい方は、Webナショジオの記事「研究室に行ってみた。」をぜひご覧ください。

ナンシー・L・シーガル

米カリフォルニア州立大学フラトン校にある双生児研究センターの所長であり、心理学者。20年以上にわたって双子を研究している。主な著書に『Entwined Lives(絡み合う人生)』『Indivisible by Two (分かちがたい二人)』『Someone Else’s Twin(取り違えられた双子)』があるほか、近く『Born Together ――Reared Apart : The Landmark Minnesota Twin Study(一緒に生まれ、離れて育つ:別々に育った双子に関するミネソタ大学の研究)』が出版される予定。公式サイト: www.drnancysegaltwins.org